何を始めても、三日でやめてしまう。自分は意志が弱いのだと思う。

やめるたびに、その確信だけが強くなっていきます。しかも、一日抜けた時点で、もう終わった気がする。

先に答えを言うと、三日で止まったのは、あなたの意志が弱いからではありません。意志のかわりに置くものが、抜けていただけです。そして、一日抜けても終わりではないことは、測った研究があります。順番に、書きます。

三日坊主は、なぜ起きるのか

決意は、燃料に似ています。

補給の仕組みがないまま走れば、使うたびに減って、だいたい三日で切れるようにできている。あなただけではなく、誰の脳でも、そうなっていました。つまり、三日で止まったのは、仕様どおりの結果です。仕様どおりに動いただけの自分を、責める必要はありません。

それに、書けなかったことより、また続かなかった、という事実のほうが、あとに残ります。片づけるのも捨てるのも、負けを認める気がしてできない。ノートが机の隅から引き出しへ移動して、視界から消える。覚えのある方も、いるはずです。

そして——止まったこと自体より、また続かなかった、という採点のほうが、長く残ります。試すたびに、自分を評価する材料が増えていく。ここがいちばん、もったいないところでした。

習慣がつくまで、実際は何日かかるのか

ここで、調べた話を置きます。

2010年、ロンドン大学のラリーたちが、96人に、毎日同じ状況で行う行動をひとつ選んでもらい、12週間追いかけました。昼食に果物を食べる、夕食後に走る、といった行動です。毎日、その行動がどれくらい自動的にできたかを記録してもらう。

結果、行動が自動になるまでの日数は、中央値で66日でした。ただし、幅がとても広い。早い人で18日、遅い人で254日。三週間で習慣になる、という有名な話は、この研究のどこにも出てきません。

そして、いちばん大事な発見がもうひとつあります。一回抜けても、習慣化の進み方に目立った影響はなかった。一日サボったから振り出し、ではなかったのです。

66日自動になるまでの中央値食べる・飲む・動く行動で18〜254日人による幅行動と人で大きく違う影響なし一回抜けたとき振り出しには戻らないLally et al. (2010) European Journalof Social Psychology66日自動になるまでの中央値食べる・飲む・動く行動で18〜254日人による幅行動と人で大きく違う影響なし一回抜けたとき振り出しには戻らないLally et al. (2010)European Journal ofSocial Psychology
三週間説は研究に出てこない。しかも、一回抜けても振り出しには戻らない。

つまり、三日で止まって「終わった」と思っていたのは、採点のほうが早すぎただけでした。研究の側から見れば、三日目は、まだ始まったばかりです。

続いている行動には、何があるのか

ここからが、今日の本題です。

いま続いている行動を、ひとつ思い浮かべてみます。たとえば、歯みがき。

あれが毎日続いているのは、意志が強いからではありません。洗面所に立つ、というきっかけが毎晩あるから、勝手に手が動くだけです。がんばって磨いている人は、まずいません。

逆のことも起きます。旅行先で、うっかり忘れそうになる。あれは意志が弱くなったのではなく、いつもの洗面所ごと、きっかけが消えたからでした。

きっかけ洗面所に立つ。枕元にノートがある行動手が勝手に動く。考えていないちょっといいこと口がさっぱりする。一行書けた繰り返し同じ状況で、また起きるきっかけ洗面所に立つ。枕元にノートがある行動手が勝手に動く。考えていないちょっといいこと口がさっぱりする。一行書けた繰り返し同じ状況で、また起きる
続いている行動の前には、必ずきっかけが置いてある。この流れに、意志という項目はない。

続いている行動の前には、かならず、きっかけが置いてあります。この流れのどこにも、意志という項目はありません。意志の出番は、今夜から始めると決める、最初の一回だけでした。

意志のかわりに、何を置くのか

やることは、ひとつです。行動の手前に、きっかけを先に置く。

感謝ノートが三日で止まった人の話を聞くと、たいてい、ノートは引き出しのなかにあります。思い出して、取り出して、開くまでに、ハードルが三つ並んでいる。決意だけが、ぽつんと置いてある状態です。それを、枕のすぐ隣へ移す。引き出しから枕の隣へ、距離は一メートルもありませんが、脳にとっては大きな引っ越しでした。翌朝、思い出そうとする前に、ノートのほうから視界に入ってくる。

意志で始める寝る前に書こう、と決意だけを置く。ノートは引き出しの中。三日で燃料が切れて、自分を採点するきっかけを置くノートを枕の隣へ。目に入ったら一行だけ。抜けた日があっても振り出しには戻らないので、翌日また置く意志で始める寝る前に書こう、と決意だけを置く。ノートは引き出しの中。三日で燃料が切れて、自分を採点するきっかけを置くノートを枕の隣へ。目に入ったら一行だけ。抜けた日があっても振り出しには戻らないので、翌日また置く
意志を鍛え直すのではなく、きっかけを先に置く。それで、66日は勝手に過ぎていく。

意志を鍛え直すのではなく、きっかけを先に置く。それで十分だと、僕は思っています。抜けた日があっても、研究のとおり、振り出しには戻りません。翌日、またきっかけの前に立てばいい。

三日坊主は、意志の弱さの名前ではありませんでした。きっかけを置き忘れたときに起きる、仕様どおりの現象です。置き直せば、また動きます。