調べると書き方がいくつも出てきて、かえって手が止まります。完了形で書く。日付を書く。感情を書く。全部やろうとして、一ページ目で疲れる。
先に答えを言うと、効いていたのは書式ではありませんでした。書いたあと、翌朝それをどう扱うかのほうです。そして、寝ている間に起きていることには、測った研究があります。順番に、書きます。
ノートに、何を書くのか
僕がノートを用意したのは、人生がいちばん崩れていた時期でした。友人に勧められて、一冊だけ買いました。
そこに書いたのは、収入のこと、本当に信頼できる相手のこと、体重と健康診断の数値、そして深めたい人間関係と、切りたい人間関係でした。
客観的に見れば、おめでたい内容です。貯金を失った直後の人間が、勝手に入ってくる収入のことを書いている。破談になった直後に、本当に好きな相手と結ばれると書いている。夜ご飯にハンバーガーを食べながら、軽くて動きやすい体がほしいと真剣に願っている。
それでも、真剣に書きました。ここでやったことが、ひとつだけあります。
現実から考えることを、一度やめました。どうすれば叶うのか。いつまでに叶うのか。自分にできるのか。そういう問いを、いったん横に置いたのです。
かわりに、もしすべて叶うならどうなるか、という気持ちで書きました。叶った自分は、朝どんな気分で目を覚ますのか。隣に誰がいて、どんな体で一日を過ごすのか。金額ではなく、情景のほうを書いています。
書いたあと、何をするのか
ここからが、今日の本題です。
僕がやったのは、ひとつだけでした。ノートを枕元に置いて、毎朝、一ページ目を読んでから一日を始める。
書くのは一度きりで、読むのは、毎日です。多くの書き方の説明は、書くところで終わっています。ただ——効いていたのは、そのあとのほうでした。理由は、たぶん単純です。朝いちばんに読むものが、その日一日の、探しものを決めるからだと思っています。
しばらくすると、妙なことが起きるようになりました。夢のなかで、仕事のアイデアが浮かぶのです。そのとおりに動いてみると、うまくいく。というより、何をすればいいか分かっている、という確信に近い状態になりました。
眠っている間に、脳は何をしているのか
ここで、調べた話を置きます。
2009年、カリフォルニア大学のメドニックたちが、眠りと発想の関係を実験しました。参加者に、三つの単語から共通して結びつく四つ目の単語を探す課題を出す。そのあと、休憩だけの組、浅い眠りの組、レム睡眠まで入った組に分けて、午後にもう一度課題を解かせました。
レム睡眠を取った組だけが、成績を上げました。しかも、記憶が良くなったからではありません。離れた情報どうしを結びつける力のほうが上がっていた。眠っている間に、脳は、起きているときには結びつかなかったものを、つなぎ直していたのです。
朝に読んだ一ページ目が、その日の探しものを決める。夜、眠っている間に、脳がそれと関係のあるものを結びつける。翌朝、夢のなかにアイデアの形で出てくる。僕に起きていたことは、順番としてはこれでした。
浮かんだものを、どう残すのか
ただ、忘れることも多くありました。朝に用事を入れると、慌てて準備を始めるので、思い出そうとしても出てこない。お酒を飲んだ日は、そもそも夢を見ませんでした。
そこで、再現できるように条件のほうを整えました。朝に予定を入れない。夢を見た日の過ごし方をそろえる。起きたらすぐ、忘れないうちに書き留める。
結果として、これが睡眠の質を上げることにもつながりました。夢を見た日はすっきり目が覚めて、思いついたことを試したくてたまらなくなる。まわりからは、急に活動的になったように見えたはずです。
ノートに書いた願いは、一年経たないうちに、ほとんど現実になりました。ノートが叶えたのではありません。書いたあとの毎朝が、目に入るものを入れ替えて、夜の脳が、それを結びつけていっただけだと、僕は見ています。



