なぜか、自分の直感はよく当たる。でも、理由が分からないので人に言えない。

当たった話をすると怪しまれるので、黙っている方は多いように思います。理由が言えないぶん、自分でも半分疑っている。

先に答えを言うと、直感が当たるのは、あなたが特別だからではありません。頭で考えるより先に、潜在意識のほうが読み終えているだけです。そして、それが本当かどうかを、僕は一度、意図せず実験で確かめてしまいました。順番に、書きます。

直感は、どこで起きているのか

初対面の人に会った瞬間、「なんとなく合う」「なんとなく苦手」を感じたことがあるはずです。言葉を交わす前に、もう感じている。

あれが、直感です。

この速さは、実験で測られています。2006年、心理学者のウィリスとトドロフは、学生に人の顔写真を0.1秒だけ見せて、信頼できるか、有能か、好ましいかを判断させました。その判断は、時間を無制限に与えられた別の学生の判断と、強く一致しました。しかも、見せる時間を長くしても、一致の度合いはほとんど上がらなかった。

つまり、人は0.1秒で判断を終えていて、残りの時間は、その判断に自信をつけているだけでした。

0.1秒顔を見た時間それだけで信頼できるかを判断一致時間無制限の判断と特に「信頼できるか」で強く一致上がらない時間を延ばしても一致の度合いはほぼ同じWillis & Todorov (2006) PsychologicalScience0.1秒顔を見た時間それだけで信頼できるかを判断一致時間無制限の判断と特に「信頼できるか」で強く一致上がらない時間を延ばしても一致の度合いはほぼ同じWillis & Todorov(2006) PsychologicalScience
判断は最初の一瞬で終わっている。あとの時間は、確信を足しているだけ。

頭がそれを整理し終える前に、潜在意識のほうが先に答えを出しています。だから、理由が言えません。理由が言えないぶん、怪しく聞こえるだけです。

若い人は、これを「バイブスが合う」と言います。昔の人は、同じものを「波動が合う」と呼びました。言葉が変わっただけで、人間がやっていることは、変わっていません。

外れた1枚が、いちばん確かだった

ここからが、今日の本題です。僕は理系で、こういう話を信じない側の人間でした。占いは統計と話術だと思っていました。

それが変わったのは、九州の島でのことです。

手元に、8枚の紙を渡されました。占ってほしい人を7人と、自分の名前を書く。相手は、書かれた紙を火に通しながら、その人のことを言い当てていきます。当たりました。ほとんど、心当たりのある話でした。

ただ、僕を最後に落としたのは、当たったほうではありません。

外れた1枚のほうです。

8枚のうち1枚だけ、何を言われても、まったく心当たりのない紙がありました。帰り道に、理由が分かりました。その1枚だけ、名前の漢字を、一文字だけ書き間違えていたのです。

名前が正しい7枚すべて心当たりのある話誰にも話していないことまで当てられ4年後、実際に起きたことも含む名前を間違えた1枚何を言われても心当たりがない命の話も災いの話も全部外れ本人は書き間違いに気づいていない名前が正しい7枚すべて心当たりのある話誰にも話していないことまで当てられた4年後、実際に起きたことも含む名前を間違えた1枚何を言われても心当たりがない命の話も災いの話も全部外れ本人は書き間違いに気づいていない
書き間違えた1枚だけが外れた。話術で当てているなら、この1枚も当たるはずだった。

僕は、気づかないまま、対照実験をしていました。

もし相手が、僕の反応を読んで話を合わせているなら、あの1枚も当たるはずです。僕自身、書き間違いに気づいていなかったのだから、顔にも出しようがありません。それなのに、そこだけが外れた。

読んでいたのは、僕ではありませんでした。紙に書かれた名前の、その先にいる本人のほうです。名前が、その人とつながっている。理系の頭で、考えられる仕掛けを一つずつ消していって——最後に残ったのが、それでした。信じたかったからではありません。消去法です。

帰ってから、僕は言われたとおりに動いてみました。仕事は、良い方向に動き始めました。当時つきあっていた彼女とは、自分から別れました。それが正しかったことは、あとになって分かりました。当たったかどうかを確かめる方法は、結局、動いてみることしかありませんでした。

直感と、願望の違いはどこにあるのか

ここで、よく混ざるものを分けておきます。直感が外れた、という話をよく聞きますが、中身を聞くと、外れたのは直感ではないことが多い。

外れているのは、願望か、不安です。こうなってほしい、こうなったら困る。その気持ちが先にあって、あとから直感の形をして出てくる。0.1秒で出た答えではなく、何時間もかけて頭が作った答えのほうです。

直感会った瞬間に、もう出ている理由は言えないこうなってほしい、が混ざっていないあとから頭で打ち消したくなる願望・不安考えているうちに、出てくる理由がいくつも言えるこうなってほしい、が先にあるあとから直感の形をとる直感会った瞬間に、もう出ている理由は言えないこうなってほしい、が混ざっていないあとから頭で打ち消したくなる願望・不安考えているうちに、出てくる理由がいくつも言えるこうなってほしい、が先にあるあとから直感の形をとる
どちらも「なんとなく」の顔をして出てくる。分かれ目は、感情が先か、あとか。

見分け方は、ひとつです。出てきた順番を見る。感情が先にあって、答えがあとから来たなら、それは直感の顔をした願望です。答えが先に来て、感情があとから追いついたなら、直感のほうです。事実と、そこに付けた意味を、分けて眺めるだけで、かなりの部分が見分けられます。

毎日使っている直感を、どう扱うのか

この話は、遠い世界のことに聞こえるかもしれません。ただ、規模が違うだけで、やっていることは同じでした。

あの人たちは、特別な種族ではありません。全開になっているだけです。そして、あなたが毎日使っている「なんとなく」は、その入口にあります。0.1秒で判断を終えている、あの機能です。

違いは、能力の有無ではなく、開いているか、閉じているか。それだけでした。

誰でも0.1秒で相手を読み終えているふだん理由が言えないので、頭が打ち消す開いた人打ち消さずに、そのまま受け取る全開の人紙の名前の先にいる本人まで読む誰でも0.1秒で相手を読み終えているふだん理由が言えないので、頭が打ち消す開いた人打ち消さずに、そのまま受け取る全開の人紙の名前の先にいる本人まで読む
同じ機能を、どこまで使っているかの差。新しく手に入れるものではない。

だから、直感を当てるために、何かを足す必要はありません。オーラも、手相も、要りません。すでに持っているものの、感度の問題です。

ひとつだけ、僕の観察を置いておきます。あの「なんとなく合わない」が、あとから「合う」に変わった例を、僕は一度も見ていません。条件や損得で自分に言い聞かせても、消耗が積み上がっていくだけでした。0.1秒で出た答えを、頭が何時間かけて上書きしても、最初の答えのほうが残ります。