昼間は平気だったことが、夜になると大ごとに見える。一日の最後に、いちばん疲れる時間が来てしまう。
先に答えを言うと、寝る前の心配は、性格の問題ではありません。真夜中の脳は、昼と別の設定で動いているからです。そして、心配の置き場所を変えるだけで寝つきが早まることは、測られています。順番に、書きます。
寝る前に不安になるのは、なぜなのか
昼に考えたら、それほどでもない問題。同じ問題が、夜には倍の大きさで迫ってきます。問題が育ったのではありません。見ている側の設定が、変わっている。
ここで、調べた話を置きます。
2022年、タブスたちが、夜中に起きている人間の脳と行動についての研究をまとめて、ひとつの仮説を出しました。「真夜中の心」と名づけられたものです。人の前向きな気分は、昼に高く、夜中の一時から四時に底を打つ。同じ時間帯、判断を司る前頭前野の働きは弱まり、感情の側が強く出る。だから、夜中の人間は、悪いほうへ偏った見方をしやすく、衝動的な判断をしやすい。
つまり、布団の中で問題が大きく見えるのは、あなたが弱いからではなく、その時間の脳が、そういう設定になっているからでした。夜に出した結論は、昼のあなたの結論ではありません。
心配を、消そうとするとどうなるのか
だからといって、心配を消す必要はありません。消そうとすると、かえって大きくなります。心配できるのは、真面目に生きている証拠でもあります。あなたの意志が弱いから、夜に不安が来るのではない。預け先が、決まっていなかっただけです。
僕はこれを、置き場所の問題だと考えています。頭の中に置いたままの用事は、夜中の脳にとって、まだ開いている窓です。閉めようとするほど、風が入ってくる。
預けると、何が起きるのか
2018年、スカリンたちが、57人を睡眠の実験室に泊めました。寝る前に、五分だけ書いてもらう。片方の組は、これから数日でやらなければならないこと。もう片方の組は、ここ数日でやり終えたこと。そのあと、脳波で、寝つくまでの時間を測る。
結果、やることリストを書いた組のほうが、はっきり早く眠りに落ちた。しかも、書き方が具体的な人ほど、早かった。やり終えたことを書いた組は、逆で、詳しく書くほど遅くなっています。
紙に移すと、窓が閉まる。消したのではなく、預けた。それだけで、脳は見張りをやめて、眠りに入れました。夜中の脳は、用事を覚えておく係を、紙に渡せたのです。
今夜、どこに預けるのか
僕の観察では、夜の心配の中身は、たいてい昼には解ける大きさのものです。解けないのは、解く時間帯が間違っているだけでした。夜中の脳に判断を任せない。決めるのは、設定が戻った朝の自分にする。
布団の中で心配の続きが始まったら、それは朝の自分の仕事だと、一度、手渡す。紙でも、心の中の一言でも、預け先があるだけで、その夜の脳は見張りをやめます。
夜に見えた大きさは、夜の設定が作ったものでした。朝になれば、元の大きさに戻っています。
出典・参考
- Tubbs, A. S., et al. (2022). The Mind After Midnight: Nocturnal Wakefulness, Behavioral Dysregulation, and Psychopathology. Frontiers in Network Physiology.(前向きな気分は1〜4時に底、夜間は前頭前野の活動が弱まる)
- Scullin, M. K., et al. (2018). The Effects of Bedtime Writing on Difficulty Falling Asleep: A Polysomnographic Study Comparing To-Do Lists and Completed Activity Lists. Journal of Experimental Psychology: General, 147(1), 139–146.



