どちらが悪いわけでもないぶん、もやもやが残ります。自分が冷たくなったのか、相手が変わったのか。
先に答えを言うと、縁が切れるときに起きているのは、相手の変化でも、あなたの冷たさでもありません。拾うものが、入れ替わったのです。そして、人が持てる縁の数には、もともと上限がありました。順番に、書きます。
人が持てる縁には、上限がある
ここで、調べた話を置きます。
イギリスの人類学者ロビン・ダンバーは、霊長類の脳の大きさ、とくに社会的な認知を担う新皮質の大きさと、その動物が作る群れの大きさに、はっきりした相関があることを見つけました。脳の大きさが、安定して付き合える相手の数を決めている。人間の場合、その数はおよそ150人。ダンバー数と呼ばれています。
150という数字そのものには幅があって、100から250のあいだとされています。ただ、上限があること自体は動きません。枠は、有限でした。
つまり、縁が切れることと、新しい縁ができることは、同じ一つの動きです。枠が有限なら、入れ替わりは避けられません。誰かと疎遠になったとき、その席には、次の誰かが座ります。
縁が切れるのは、何が起きているのか
よくある説明は、こうです。波動が上がったから、合わない人が離れていく。ステージが変わったサイン。
言いたいことは分かります。ただ、この言い方には落とし穴がありました。離れていった相手を、下に置いてしまうことです。そもそも——上がったから離れた、という順番だと、離れた側が下にいることになります。実際には、向いている方向が変わっただけ、ということのほうが多いように思います。
仕組みは、もっと単純でした。人は、探しているものだけを拾います。毎日、何を大事だと思って過ごしているか。その基準に合う人だけが、目に入る。基準が変われば、拾う人が変わります。
相手が悪くなったわけではない
だから僕は、離れていく相手を悪者にしません。
向こうが変わったのではなく、こちらの拾う基準が変わっただけ、ということが多いからです。同じ人が、以前は面白く見えていて、いまは疲れて見える。相手は、たいてい同じままでした。
逆に、自分を責める必要もありません。冷たくなったのではなく、合う場所が動いただけです。枠が有限である以上、全員と同じ距離を保ち続けることは、最初からできない相談でした。
ひとつだけ、僕の観察を置いておきます。会ったあとに軽くなるか、重くなるか。ここは、条件や損得で上書きしても変わりませんでした。「合わない」が「合う」に変わった例を、僕は一度も見ていません。
入れ替わったあとに、何が来るのか
空いた席には、しばらく誰も座りません。ここが、いちばんこたえます。
僕自身、旅から帰ってきたあとの時期は、人間関係がずいぶん入れ替わりました。減った時期のほうが、先に来ます。増えるのは、そのあとでした。
僕の観察では、整っている人のところには、整っている人が集まります。だから、空いた期間にやることは、人を探すことではありませんでした。眠りに入れるもの、体に入れるもの、目から入れるもの。この三つを整えることだけです。整えた人の席には、整った人が座りに来ました。
縁が切れるのは、終わりの合図ではなく、席が空いた合図でした。150の枠のなかで、次の人のために空いた席です。


