仲が良かったはずの人と、気づいたら疎遠になっていた。

どちらが悪いわけでもないぶん、もやもやが残ります。自分が冷たくなったのか、相手が変わったのか。

先に答えを言うと、縁が切れるときに起きているのは、相手の変化でも、あなたの冷たさでもありません。拾うものが、入れ替わったのです。そして、人が持てる縁の数には、もともと上限がありました。順番に、書きます。

人が持てる縁には、上限がある

ここで、調べた話を置きます。

イギリスの人類学者ロビン・ダンバーは、霊長類の脳の大きさ、とくに社会的な認知を担う新皮質の大きさと、その動物が作る群れの大きさに、はっきりした相関があることを見つけました。脳の大きさが、安定して付き合える相手の数を決めている。人間の場合、その数はおよそ150人。ダンバー数と呼ばれています。

150という数字そのものには幅があって、100から250のあいだとされています。ただ、上限があること自体は動きません。枠は、有限でした。

約150人安定して付き合える上限ダンバー数100〜250研究で示された幅人によって違う有限枠そのもの脳の大きさで決まっているDunbar, R. I. M. の研究(Wikipedia「ダンバー数」)約150人安定して付き合える上限ダンバー数100〜250研究で示された幅人によって違う有限枠そのもの脳の大きさで決まっているDunbar, R. I. M.の研究(Wikipedia「ダンバー数」)
付き合える人数には天井がある。誰かが入れば、誰かが出る。

つまり、縁が切れることと、新しい縁ができることは、同じ一つの動きです。枠が有限なら、入れ替わりは避けられません。誰かと疎遠になったとき、その席には、次の誰かが座ります。

縁が切れるのは、何が起きているのか

よくある説明は、こうです。波動が上がったから、合わない人が離れていく。ステージが変わったサイン。

言いたいことは分かります。ただ、この言い方には落とし穴がありました。離れていった相手を、下に置いてしまうことです。そもそも——上がったから離れた、という順番だと、離れた側が下にいることになります。実際には、向いている方向が変わっただけ、ということのほうが多いように思います。

仕組みは、もっと単純でした。人は、探しているものだけを拾います。毎日、何を大事だと思って過ごしているか。その基準に合う人だけが、目に入る。基準が変われば、拾う人が変わります。

基準が変わる何を大事だと思って過ごすかが、変わる拾う人が変わる基準に合う人が、目に入るようになる距離ができる以前は面白かった話が、疲れて聞こえる席が空く有限の枠に、次の人が入基準が変わる何を大事だと思って過ごすかが、変わる拾う人が変わる基準に合う人が、目に入るようになる距離ができる以前は面白かった話が、疲れて聞こえる席が空く有限の枠に、次の人が入る
変わったのは相手ではなく、こちらの拾う基準。人も、拾うもののうちのひとつ。

相手が悪くなったわけではない

だから僕は、離れていく相手を悪者にしません。

向こうが変わったのではなく、こちらの拾う基準が変わっただけ、ということが多いからです。同じ人が、以前は面白く見えていて、いまは疲れて見える。相手は、たいてい同じままでした。

逆に、自分を責める必要もありません。冷たくなったのではなく、合う場所が動いただけです。枠が有限である以上、全員と同じ距離を保ち続けることは、最初からできない相談でした。

上がった証拠、という説明離れた相手が下にいることになる自分が上がったことの証明が要る次に離れられたとき、下がった気がす拾うものが変わった、という説明相手はそのまま。向きが変わっただけ枠は有限なので入れ替わりは当然空いた席は、次の縁のためにある上がった証拠、という説明離れた相手が下にいることになる自分が上がったことの証明が要る次に離れられたとき、下がった気がする拾うものが変わった、という説明相手はそのまま。向きが変わっただけ枠は有限なので入れ替わりは当然空いた席は、次の縁のためにある
どちらの説明を取るかで、離れた相手の置き場所が変わる。

ひとつだけ、僕の観察を置いておきます。会ったあとに軽くなるか、重くなるか。ここは、条件や損得で上書きしても変わりませんでした。「合わない」が「合う」に変わった例を、僕は一度も見ていません。

入れ替わったあとに、何が来るのか

空いた席には、しばらく誰も座りません。ここが、いちばんこたえます。

僕自身、旅から帰ってきたあとの時期は、人間関係がずいぶん入れ替わりました。減った時期のほうが、先に来ます。増えるのは、そのあとでした。

僕の観察では、整っている人のところには、整っている人が集まります。だから、空いた期間にやることは、人を探すことではありませんでした。眠りに入れるもの、体に入れるもの、目から入れるもの。この三つを整えることだけです。整えた人の席には、整った人が座りに来ました。

縁が切れるのは、終わりの合図ではなく、席が空いた合図でした。150の枠のなかで、次の人のために空いた席です。